不動産鑑定評価基準の見直し
国土庁は不動産の価格を決める公的規範である鑑定評価基準を見直す方針のようだ。「不動産証券化」の動きに今の規準が対応してないのが主な理由だ。国土庁は来年度から規準改定に着手し、早ければ2002年に新基準を決める考えだ。
規準見直しでは、賃貸ビルなどの投資用不動産を土地と建物一体の「複合不動産」と見なしビルの投資採算性を評価する際に賃料などの現金収支を重視したDCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法を採用する。またビルが生み出す収益を算定するため、実質賃料などを細かく調べる「物件精査業務」を実施する。所謂、不動産デューデリジェンス業務の一翼を担う事になる。
不動産鑑定評価も今後、物件のシビアな調査能力が要求される。バブル経済崩壊後地価が下落を続け、土地神話が崩壊した。従来はキャピタルゲインがすべてのリスクをカバーしたが、今後は地価下落により建物のウエイトが高まり、建物をはじめとする物的リスク、法的リスク、そしてマーケットの状況変動によるリスクを把握、予測する能力が必要となる。特に建物は従来、土地評価ほど精密な作業はされなかったが、IT等の付加価値の程度、厳密な耐用年数の把握、劣化、損傷の精査など精度の高い評価でなければ社会的需要に応えられないだろう。土地価格についても、車の普及が駅前商店街の経済価値を下落させたように今後、インターネットによるECがドラステイックな価格形成要因変化をもたらすと思われる。鑑定評価基準に言う変動、予測の原則がより求められる時代になった。
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